Iの漂流戦士
全てを話して楽になりたかったのだろうか?
それとも嘘を付いてしまった正義へ罪悪感を抱いているからだろうか?
いや、きっとどれも違う
隼人はギューッと唇を噛み締めて言った
それが全ての答え
『……俺たまに本気で父を殺したくなるんですよ』
ーーードクンッ……
正義の心臓がものすごい速さで鼓動していく
“なぁ、先生って、今まで人恨んだ事ないだろ?”
修の言葉が頭を過る
『家に帰って女と寝てる時、飯を作れと蹴られる時、酒を買って来いと命令される時、俺……常に考えちゃうんですよね。こいつさえ居なければって』
“憎くて、悔しくて、苦しくて、こいつさえ居なければって思った事ないだろ?”
『まぁ、そんな勇気ないんですけどね。でも父を殺せないなら自分が死んだ方が楽かもしれないと思うようになったんです』
“傷ついて、傷つけられて、死んだ方が楽だと思った事は?”
『明日死のう、明日死のうと思いつつ結局今日も生きちゃうんですよね。なんかそんな近くに自分が楽になれる方法があるんだと思うと意外と頑張れて……』
“明日を生きる事よりも、明日死ぬ事に希望を感じた事はある?
………ないだろ?先生”
隼人の言葉と修の言葉がリンクする
正義の目には涙が溢れていた
隼人が正義に全てを打ち明けたのは死が目前にあるから
死んでしまえば新造に怯える事も苦しむ事もない
正義は悔しくて悔しくて涙が止まらなかった
こんなにも心の傷は深かった
こんなにも隼人の傷は深かったのだ
“なぁ…先生、世の中にはそんな気持ちを抱えて必死に生きてる奴が居る。そいつらを苦しめた人間を殺してあげる事が俺達の“正義”だ”