Iの漂流戦士






『……ハァ…ハァハァ…』


さっきまで壁にぶつかりながら歩いてた男とは思えない程、全速力で逃げた

複雑に絡み合った路地裏をひたすら走り続ける


---そう。あれから逃れる為に



齢40過ぎの男にとって、全速力は思った以上にきつい


ーーーードクンッ、ドクン…

心拍数と息がどんどん上がっていくのを感じた



『ハァ…ハァハァ……ハァハァ…』


男はそっと後ろを振り返ってみた


---------誰も居ない。


逃げ切ったのかそれとも追ってこなかったのか。
どっちにしてもいい

あの殺人鬼から逃れられたのなら



男は一瞬、安心したような表情を見せた

………だが、それは絶望へのカウントダウンだった




今宵は満月


暗闇を照らす明かりがあればある程、地面に映し出される影も色濃くなる



地面に浮き上がっていた影は二つ


男は恐る恐る後ろを振り返った

そこに居たのは白い仮面を被り、右手に大きな鎌を持った人物



殺人鬼は男の真後ろに居た






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