Iの漂流戦士
高木功の体が前のめりになり、足を手すりにかけようとするがピタッと止まった
それは一年前に修と交わした会話が頭を過ったからだ
『この地球上で人間という生き物が一番多いのに、なんで人は一人になっちまうんだろうな』
『きっといらない人間が多すぎるんだよ』
『俺は絶対にこんな理不尽な世界を許さないよ』
『どうするの?』
『生まれ変わるんだ』
『何に?』
『殺人鬼という名の戦士』
その後、言葉に付け加えるように修はこう言った
『お前はこっちに来るなよ』
その言葉通り修は帰ってきた
枝波修ではない、殺人鬼01として
そして殺人鬼という名の戦士となって
高木功はフッと微笑み、手すりから体を離した
『……やっぱりずるいよな…兄さんは』
高木功にとって修はかけがえのない存在
何度も兄に助けられ、励まされてきた
だからこそ高木功は修の言い付けは必ず守る
修が悲しむ事は絶対にしたくなかった
“お前はこっちに来るなよ”
その言葉さえなければ、高木功はすぐに修を追い死んでいただろう
そうなると分かっていたからこそ、修は高木功にそんな言葉を残した
『そんな事言われたら俺は一生そっちに行けないじゃないか…』
高木功はそう言いながら、雨が降る空を見上げていた