Iの漂流戦士





慣れない手つきで水をあげていると、


『あんまりあげすぎると枯れちゃうよ』


正義の背後で声がした


振り向くと……そこにはナノハが立っていた


正義は思わず如雨露を落としてしまいそうになった

今までナノハに会いたくて殿町まで探しに来た事がある正義だが、今はまだ会いたくなかった


何も知らずに“救う”と言ってきたけれど、今は違う

だって正義は全てを知ってしまったのだから



『この花パンジーでしょ?』

そんな気持ちも知らず、ナノハは無邪気に近付いてくる

以前、正義が貸したジャージはまだ着たままだった


『当たってる?』と正義に同意を求めるナノハ


正義は慌てて我に返り、『うん』とぎこちない返事をした



『………今日は一人なの?』

正義は辺りを見渡し、聞いた


『うん、私いつも一人で見に来るの』


ナノハは腰を屈(かが)めて、チョンッと芽を触った

この場所は正義とナノハが一緒に種を植えた場所


あれから正義は色々忙しく、この場所どころか殿町に来る事さえなかった


だけどその間、ナノハは毎日欠かさず種の成長を確認しに来てたのだ


その姿を想像し、正義は胸がいっぱいになった





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