Iの漂流戦士




“もう遅いんだよ、
兄さん達は死んでるんだから”


頭の中で何度この言葉を繰り返したか分からない

しかし、ナノハは“ここ”に居る


こうやって正義の隣に座り、笑顔を見せてる

(……本当にナノハちゃんは………)


すると、ナノハが芽を見つめながら言った


『ねぇ、先生。パンジーの花言葉って知ってる?』


花どころか植物自体育てた事のない正義が知ってる訳なかった

正義はそっとナノハの横にしゃがみ、如雨露を地面に置いた


『知らない、教えて?』

正義がそう言うと、ナノハはクスリと微笑み言った



『“心の平和”』

そして『先生みたいだね』と付け加えた


(……心の平和………)


正義は言葉の意味を考えるように少し無言になった

その隣ではナノハが鼻歌を歌っている


懐かしいメロディ、初めて会った時に聞いた童謡のあの曲だった


『……♪♪…♪♪…ー』

ナノハの鼻歌が耳に響く中、正義がポツリと呟く




『……平和なんて本当にあるのかな?』

ナノハは歌うのを止め、僅かに首を傾げた


“心の平和、先生みたいだね”

多分、きっと少し前だったら素直に喜べた


平和なんて大きな事を考えた事はないけど、人間にとって一番重要なのは心



心が満たされている人は、日々の日常も満たされているし、

心が壊れてしまえば、全てがダメになってしまう


心は人間の全て


だから正義は心がダメになってしまった人達に手を差しのべてきた

救いたいと望んできた


だけど地球上からすれば、それはたったの米粒みたいなもの


一人の心を救っても、世の中が平和になる訳じゃない


一人救えば、また一人救いを求める人が増える

そして、その中には救えず、自ら死を選んだ者もいる


ここに居るナノハだってそう







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