Iの漂流戦士





正義の深刻な顔にナノハは『どうしたの?』と顔を覗きこんだ

その瞳は純粋で、とても心に傷があるとは思えない


しかし彼女は殺人鬼

普通の女の子だけど、人を殺してきた殺人鬼なのだ




『……ねぇ…君の花言葉は?』

正義は声を振り絞った


ナノハは言葉の意味を理解したのか、一呼吸置いた




『……小さな幸せ』

聞き逃してしまいそうな程、ナノハの声は小さかった


“菜の花”の花言葉は小さな幸せ



“ナノハちゃんみたいだね”

何も知らない正義だったら言ってしまっただろう


大きな物より、小さな花を見つけて笑うのがナノハだから

綺麗な物が好きで、月よりも一つの星を見て笑うのがナノハだから


しかし、現実は違う


ナノハはそんな小さな事さえ、生きている時には見つけられなかった


“綺麗だね”たった一言が、誰とも言い合えなかった


そんなナノハに救いを差しのべたのは修だった


ナノハにとって何千、何万、何億とある言葉の中で修が言った言葉が一番心に響いた



“綺麗なものが好きなら自分の事も好きになれるじゃん。
だってお前綺麗だもん”


そしてナノハは修の手を握った


殺人鬼になる事を選んだ


こんな汚くて、苦しい世の中を変える為に





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