Iの漂流戦士




ナノハは珍しく話しを止めようとしなかった



『……本当はみんな分かってるよ。ちゃんと分かってる』


正義はその言葉を聞いて、込み上げるものを押さえられなかった



『……殺人鬼になって誰かを救えても、自分達が救われない事。本当はまだ過去に縛られてるんだと思う。私も一馬も修も』


正義の目から一筋の涙が流れた

ナノハの方を見ると涙は出ていなかった

きっと涙なんて出尽くしているのだろう


ナノハは静かに目を瞑り、自分に語りかけるように言った



『過去の自分と向き合って、全てを許せたらどんなに楽なのかなって思う。
でもね、ダメなの。どうしても許せないの』


『…………』


『あなたはすごく暖かい人。あなたみたいな人が側に居たらみんな死ななかった。だけど、私は救われない、もう一生救われる事なんてないよ』


ナノハの想い、こんなに全てを話すのは相手が正義だから

綺麗な心を持つ正義だから


正義は心の底から世の中が嫌いになりそうだった



こんなにも彼女の心を傷つけた人間を殴ってやりたい

それで、同じように傷つけてやりたい


教師として思ってはいけないと分かっていながら、そう思わずにはいられない


殺人鬼が戦士と呼ばれ、彼らのやっている意味がやっと理解できた






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