Iの漂流戦士






正義はゆっくりと口を開く



『漂流戦士のタイトルの意味は?』


本を二度も読み返したけれど、どうしても分からない


『それは答えない事にしてます』

あっさりと交わされてしまった


正義は言い方を変えた



『戦士って誰の事?』


先程“大人には分からない”と女子達に言われてしまった質問


本当はわかっている

だけどその事実を否定して欲しかった


『それは読んだ人が決める事だと思います』


きっと高木功は今まで沢山の取材やインタビューを受けてきたんだろう

だからなのか、質問を不快のないように交わす事が上手かった



『高木君が漂流戦士を書いたのはいつ?』


『書き始めたのは半年以上前ですが、本になって発売されたのは4ヵ月前です』


(4ヶ月前…。殺人鬼が現れ始めたのと同じ時期。これは偶然か?)


正義はどうしても題名に戦士と入っているのに、

作中に一度もその言葉を使っていない事が気になっていた


(必ず意味はある。何か意味が…………)




『……高木君は…その…殺人鬼の事をどう思う?』


仮にも昨夜、学校の教員が殺された生徒に聞く言葉じゃない事は十分に承知している


でもこんな事を聞いたとしても、高木功は上手く交わしてしまうんだと思っていた


高木功はベンチからスッと立ち上がった

---------そして






『戦士だと思います』





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