Iの漂流戦士
そう言った瞳はあまりに強く、思わず息を飲んでしまう程だった
高木功はその後すぐに、
『塾があるのでそろそろ…』と帰りたい意志を見せた
高木功が書いた“戦士”の意味と
殺人鬼が“戦士”と呼ばれている事は果たして繋がっているのだろうか
(なんだろうこの気持ち…。小説を読んだ後と同じだ。謎が多すぎて余韻が残る感じ……)
『あ……。も、もう1つだけ…もう1つだけ質問してもいいかな?』
正義は公園を出ようとする高木功を呼び止めた
『はい、どうぞ』
正義は迷っていた
本当にこんな事を聞いてもいいのかと
“中野先生が死んで君は悲しい?”
倉木が高木功にそう聞いた時、正義は正直神経を疑っていた
それなのに、正義は今それ以上の事を聞こうとしている
自分で自分の神経を疑う言葉
訴えられてもいい、人間として軽蔑されてもいい
それでも喉まで出かかった言葉を今さら引っ込める事は出来なかった
『君……殺人鬼じゃないよね?』
高木功は相変わらず表情1つ変えなかった
『いいえ、僕は殺人鬼です』
----その瞬間、生暖かい風が二人の間を吹き抜けて行った
夕日が色濃くなり公園にある電灯の影が高木功の影と重なった
正義にはその影が大きな鎌を持っているように見えた