Iの漂流戦士
----------------終わった。
男はそう心の中で思った。しかし終わりを覚悟した瞬間、ふっと冷静になった
何故自分がこんな目に合わなきゃいけない?
何故見知らぬ奴に殺されなければいけないのだと
男はキッと目の前の殺人鬼を睨み付けた
仮面から見える目はあまりにも冷酷。でも男は希望を捨てない
自分よりも“若い”殺人鬼。腕も体格も自分の方が勝っている
こいつに殺人鬼に勝てるかもしれない
いや、勝てばいいんだ
勝ってその右手の鎌を奪ってやればいいのだと
男は覚悟を決めて殺人鬼の腕を掴んだ。ギューッと力の限り殺人鬼の腕を握り締め続ける
これだけ締め付ければ鎌を持つ手が緩むはずだった
はずだった
はずだったのに、殺人鬼は微動だにしない
それどころか声すら出さなかった
鎌を持つ手が緩む事はなく、仮面から見える目はとても冷たくて男には笑っているようにも見えた