Iの漂流戦士
【殿町オフィスビル26階 屋上】
夕暮れの刻は終わり、殿の町は夜の顔になっていた。いつもの場所で立たずむ枝波修は夜空に浮かぶ星を黙って見つめている
『あいつらとの挨拶は済んだのか?』
そう後ろを見ずに言うと、すぐに返答が返ってきた
『やっぱりお見通しなんですね。修さんには』
一馬は暗闇の屋上に同化して、それを照らすのは上空の満月だけ
『分かってたよ。お前がこうゆう選択をする事もそれが一番最初だって事も』
もしかしたら出会ったあの時から分かっていた事かもしれない。永遠はない、いつか別れの時はか必ず来ると
『僕は修さんに救ってもらいました。だから僕の選択を見て自分自身の答えを見つけてほしい。臆病者の僕が出来たんですから』
修の背中を見ている内に、一馬はなんだか涙が出てきた。他の二人の時は我慢出来たのに
悲しみは涙の数ではなく、その人との思い出で決まる
修との思い出は計り知れない
『分かった約束するよ。最後はちゃんと自分で決めるから』
修はくるりと振り向き、一馬の目を見て約束した
『良かった。これで安心して逝けます。』
例え修がこの世界に留まる事を選んだとしても、自分で決めたならそれでいい
でも残していく人の事とかこれからの事とか、自分以外の事を優先する事はやめてほしい
沢山苦しんだ分、修には幸せになる権利がある
『…………修さん、前に言いましたよね?後悔してるかって。今ならはっきり言えます、僕は後悔しています』
それは殺人鬼になった事でも、戦士として裁き続けた事じゃない
『あの時、自ら死を選ばなかったら修さん達には会えなかった。-------でも僕は生きてる時にあなたに逢いたかったです』