Iの漂流戦士






ここに花を植えた時、心の中で居なくなりたいと叫んでいた

誰も居ない裏庭は唯一の居場所で、現実から逃れる為に夢中で雑草を抜いた

何かをしていれば気が紛れたし、あんなに悲しい気持ちで花を植えたのは後にも先にもない


なのに、その花に全てを救われたような

全てを許されたようなそんな気分。



あれから誰が花を育ててくれたのかは分からない


でも名前も知らない誰かが引き継いでくれた小さな命


確かにそこにはナノハが居た証があった




『最初は雑草だらけの荒れ地だったのにね』


ナノハは成長した菜の花を一つ一つ見渡す。黄色い綺麗な花は風に揺れ、とてもいい匂いがした



菜の花の花言葉は“小さな幸せ”

本当にその通りだと思った




ナノハは暫くそこに居た後、おもむろに着ていた上着を脱いだ

以前、正義に貰った白いジャージ。もうナノハには必要ない


花壇の横に綺麗に畳み、その上に何かを書いた紙を置いた


ナノハはニコリと笑い、鼻歌を唄う


その瞬間、ナノハの首元にある02のナンバーが消えた。もう殺人鬼でも戦士でもない、一人の少女に戻ったのだった--------。








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