Iの漂流戦士
辺りはこんなに静かだっただろうか?まるで時間が止まったみたいだ
『俺の事が好きならずっとここに居てって言ったよね?』
ナノハを困らせたい訳じゃない。でも引き止める方法が何も浮かばない
ナノハはゆっくりと高木功に近付きニコリと笑った
『うん、でも…………ごめんね』
堂々と自分の意見を通すナノハはもう昔のナノハじゃない
高木功が好きだったナノハは花びらみたいにふわふわしていて、誰かが居ないと飛んでしまうぐらいか弱い女の子
綺麗なものを見ると目をキラキラさせて、汚い自分をいつもいい人に変えてくれた
なのに今のナノハは花びらではなく、土に根を張った強い花の木になってしまった
『功、これ受け取って』
ナノハは何かを高木功に差し出した
『………………?』
何も分からず受けとると、手のひらには小さな花の種。数個しかない種は暗闇で落としたら見つけられないかもしれない
『それは私が植えた菜の花から取ってきたの。功だけにあげる』
『………………俺にだけ……?』
花は好きじゃないし、育てた事もない。そんな高木功にだけ種をあげた理由は---------。
『それって遠回しに生きてこれを育てろって言ってる?』
みんな自ら命を絶ったのに俺にはそれを許してくれない
『毎日水をあげて花が咲くのは季節が変わる頃かな。その間にたくさん考える時間が出来るでしょ?花が咲く頃に決めた気持ちが功の本当の答えだよ』
高木功は静かに種を見つめた
『みんなずるいな。これだから俺はいつも自分が嫌な奴に思えるんだ。………みんないい人過ぎるから』
高木功は声を震わせてうつ向いた。ナノハの前でカッコ悪い所は見せたくないのに
『功もいい人だよ』
『ナノハちゃんの前ではね。きっと本当の俺を知ったらそう言えなくなるよ』
高木功にとってナノハは初めて異性として好きになった人だった
他人に興味がなかったのに初めて好かれたいと思った。好きになって欲しいと……………。