Iの漂流戦士
すると、ナノハが高木功の手を握りしめた
『知ってるよ。功が色々と裏で悪知恵を働かせていた事も一馬と喧嘩した事もあったね。それでも功はいい人だよ』
自分の理解者ではなく、理解しようとしてくれている人が居なくなるのが怖い
こんな人にまた出逢う事が出来るのか、高木功は何度も考えた
でも今は後悔したくない。ずっと想い続けていたナノハに対してだけは
『ナノハちゃん、俺は君の事が好きだった。ナノハちゃんが兄さんを好きな気持ち以上にね』
これだけは誰にも負けないと胸を張って言える。
高木功はナノハを強く抱きしめた
『大好きだよ、ずっとずっと俺はナノハちゃんが好きだったんだ』
繰り返し言うと、ナノハの目から涙がこぼれた
『功。私ね、私の事を好きだって言ってくれる人を信じた事なかった。口先だけの気持ちに感情なんて感じられなかったから』
『……………』
『でも功の気持ちは伝わった。他の人からもらう本当の好き、功は私にくれたね。-------ありがとう』
ナノハの泣き笑いを見て、もう高木功に引き止める気持ちはなかった
最後に好きな人に気持ちを伝えられた、笑ってくれた、泣いてくれた。
多分これで十分な気がする
『約束はできないけど、種は大切に預かるよ。これから兄さんの所に行くんでしょ?』
ナノハは深く頷き、この時間が終わろうとしていた
『ナノハちゃんも後悔しないように気持ちを伝えて。君のような人に会えて良かった』
最後の言葉が言い終わる頃には、ナノハはもう居なくなっていた
高木功は暫く立ちすくんだ後に家へと歩き出した。寂しげな後ろ姿はすすり泣きと共に暗闇に消えた