Iの漂流戦士
ナノハが屋上に着いた時、一番最初に目に入ったのは真ん丸の満月だった
その中心に立つ修は笑顔でナノハを迎えてくれた
『今日はとても月が綺麗だね。今まで見た中で一番かもしれない』
ナノハは修の隣に並び、屋上の手すりを握った。
始まったのはたわいない会話
『俺もそう思ってた。でも空を見上げてる奴は1人もいない。勿体ないよな』
急いでる訳じゃないのに急ぎ足で、目線は何もないコンクリートの下ばかり
『綺麗だって思うからそう見えるのかも。修と見た景色は綺麗なものばかりだったから』
ナノハはそう言って、揺れる髪を耳にかけた
それから少し沈黙になってナノハがポツリと呟く
『修、手繋いでいい?』
返答する事なく修はすぐにナノハの右手を握った。ぎゅっと力をいれたのは修の方
『私ね、生きていた16年間より修と過ごした1年間の方がずっと長く感じた。…………後悔してないよ。私は死んだ事も殺人鬼になった事も』
『ナノハ………………』
存在は消えても、心までは消えない。
もし殺人鬼としてしか修と出逢えないのなら、ナノハは迷わずまた同じ道を歩むだろう
でももし普通に出逢えたなら嫌いになれるぐらい、飽きるぐらいずっと一緒に居たい