Iの漂流戦士

┗真相、二歩





【某私立高校 職員室】




『あれ?今日倉木さん休みなんですか?』


今年の春に教員になったばかりの若い教師が聞いた

その瞬間少し異様な空気が流れるが若い教師は気付かない


『そう、休みなの。良かったね。今日は怒られる心配はないわよ』


机に向かい書き物をしながら女の教師は言った

新任教師であるこの男は1年4組の副担任で担任は倉木が受け持っていた


倉木はベテラン教師だけあって人を育てるのが上手く、担任と副担任という立場で新任教師に教員のいろはを教えていた


『…って事は今日1日俺が担任って事ですよね…?』

自信のない情けない声を出す男に『目で見るより体で覚える方が早いよ』と同僚に渇を入れられた


男は新任式の緊張よりはマシだと言い聞かせ1年4組に向かった

男が居なくなった職員室で、すぐさま話せなかった話題になる



『倉木先生…会えたかしら?』


先程、書き物をしていた女教師の手がピタリと止まった


『もうあれから一年経ったんですね』


その言葉にこの場に居る教師全員が一年前を思い出していた







< 60 / 526 >

この作品をシェア

pagetop