ココア



でも、こんな朝の、人が忙しなく出入りするコンビニの駐車場で、そんなことが出来る訳もない。


涙をグッと心の奥にしまい込んだ。



「はい、コレ」


西原くんが私に差し出したのは、バイクのヘルメット。


彼の後ろには400ccのアメリカンバイクが停まっていた。



「え…?どうしたの、これ。え、何?どこか行くの?」


「海。まあ、俺らの地元の小さい海だけど」


アワアワと慌てる私に、あくまで飄々と答える。


「私、お財布も何にも持ってきてないよ」


「いらないよ。ちょっと走るだけだから」


そして、ヘルメットをかぶってバイクに跨った。



それでも呆然としている私に、早くするよう促す。


「ちゃんとヘルメットかぶれよ、危ないから。で、後ろ乗って」


「う、うん」





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