ココア
モタモタと彼のバイクの後ろに跨る。
西原くんは『鈍くさいな』て笑ってる。
かぶりなれていないヘルメットが、なんが変な感じ。
頭の上でグラグラするみたい。
「ねえ、どこに掴まればいいの?」
「好きなとこ、掴まっていいよ」
─好きなとこって言ったって…
バイクに乗るのも初めてな私には掴まるとこさえ分からない。
とりあえず、彼のベルト付近を掴んだ。
「大丈夫?じゃ、行くよ」
エンジン音が朝の空気を揺らして響き、彼のバイクは海へと走り出した。
風が、景色が、後ろへどんどん飛ばされていく。
耳元で風が鳴る。
西原くんの背中は、今日も、こんなにも頼もしい。
初めてのバイクも、彼の後ろなら怖くない。
彼の革ジャンの感触も、私をホッとさせていた。