ココア



信号で停まる度、トンッ、と西原くんの背中に私の体が当たる。

それだけで、私の中の熱が上がる。


恥ずかしいくらい、片想いな気がする。


こんな気持ち、私、まだ忘れていなかったんだ…



段々と懐かしい景色が目の端に映る。


私と西原くんの故郷、といっても今住んでるところから大して離れていないんだけれど。



そして、そんな地元に私は昨日、帰ったばかりだった。


頭の中に昨日の光景が映し出される。


崩れ落ちるように喚き出すお父さんの声が、脳内に響き渡った。

思わず彼を握りしめる手に力がこもる。


昨日のことは幻じゃなく、私が引き起こした現実。


強く目を瞑り、少しだけ彼の背中に頭を寄せた。



「着いたよ」


西原くんの声が、昨日の光景を打ち消した。





< 104 / 247 >

この作品をシェア

pagetop