ココア
信号で停まる度、トンッ、と西原くんの背中に私の体が当たる。
それだけで、私の中の熱が上がる。
恥ずかしいくらい、片想いな気がする。
こんな気持ち、私、まだ忘れていなかったんだ…
段々と懐かしい景色が目の端に映る。
私と西原くんの故郷、といっても今住んでるところから大して離れていないんだけれど。
そして、そんな地元に私は昨日、帰ったばかりだった。
頭の中に昨日の光景が映し出される。
崩れ落ちるように喚き出すお父さんの声が、脳内に響き渡った。
思わず彼を握りしめる手に力がこもる。
昨日のことは幻じゃなく、私が引き起こした現実。
強く目を瞑り、少しだけ彼の背中に頭を寄せた。
「着いたよ」
西原くんの声が、昨日の光景を打ち消した。