ココア
いつものように飄々と言うから、全く意図が読めない。
読めなくて困る。
困るけど、─なぜかホッとする私がいた。
その、のんきな態度はいつも、きっと私をホッとさせてくれていたのかもしれない。
「必要、って?」
「んん。ほら、海を見るとさ。一瞬だけでも、悩みを忘れちゃったりしない?」
「………。」
「あれ、俺だけかな」
こっちを見ないで話してくれるのは、彼の優しさなんだろうか。
寒さに隠れるフリで、見られないように顔をストールに埋める。
「倉野、昨日ありがとうって言ったじゃん?」
「え?」
「電話切る時。“おやすみ”じゃなくて“ありがとう”って」
そう、だっけ─
そんなこと、気にしてくれてたの…?
私をちゃんと、気にかけてくれてる─の?