ココア



いつものように飄々と言うから、全く意図が読めない。


読めなくて困る。


困るけど、─なぜかホッとする私がいた。


その、のんきな態度はいつも、きっと私をホッとさせてくれていたのかもしれない。



「必要、って?」


「んん。ほら、海を見るとさ。一瞬だけでも、悩みを忘れちゃったりしない?」


「………。」


「あれ、俺だけかな」


こっちを見ないで話してくれるのは、彼の優しさなんだろうか。


寒さに隠れるフリで、見られないように顔をストールに埋める。


「倉野、昨日ありがとうって言ったじゃん?」


「え?」


「電話切る時。“おやすみ”じゃなくて“ありがとう”って」


そう、だっけ─

そんなこと、気にしてくれてたの…?


私をちゃんと、気にかけてくれてる─の?





< 106 / 247 >

この作品をシェア

pagetop