ココア
散々泣いて、心の澱が少しずつ流れ始めて。
頑なに泣かないことを決めていた私が、ようやく安心を手に入れた気分だった。
誰にも頼れなかった。
誰にも話せなかった。
勝手に自分だけで背負い込んで、それを一人で何とかすると決めていた。
どうしてだろう?
弱い私を見せられなかったのは、どうしてだろう?
そして今、その誰にも見せなかった心を私は西原くんに話そうとしていた。
「私が二十歳の時にね、…お父さんが脳梗塞で倒れたの」
まだ、泣き声が混じりながら、間を空けながら話す私を、西原くんは、ただ見守っていてくれた。
「最悪の事態は免れたんだけど、その後の症状はお父さんにとってこれ以上ない苦しみだったんだと思う」
「─うん」