ココア



そう。

それは、つい昨日のこと─。



「私の顔を見ると、お父さんはやっぱりイライラして感情が抑えられなくなるみたいで。俺が嫌いなら出ていけ、…て」



「──。」



「お父さんに杖で頬を殴られて、頭がカーッとなって…。こんな家、もうイヤだって。二度と顔見たくないって言った…」



「──。」



「そして…、さよなら……って…言った…んだ………」



お父さんの悲痛な喚き声が、今も頭から離れない。



「倉野」



「本心なんだ、私の。もう、二度と顔を合わせたくないって本気で思った……。お父さんも私の顔見たら出ていけしか言わないし」



「──倉野─」



「私、最低なんだ…。こんなこと、思ってたって言っちゃいけないのに─、お父さんに言っちゃいけないのに」



その時、温かな感触を頬に感じた。





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