ココア
西原くんの手が私の左頬に触れてる。
目の前にしゃがんだ西原くんは、とてもとても優しい顔をしていた。
「痛い?」
「─少…し」
「痛いよな、赤くなってる」
「大、丈夫だよ」
「でも、もっと痛いのはお前の心、だろ」
流れる涙が彼の手を濡らす。
「言いたくなかったんだよな、本当はそんなこと」
「…う…ん………」
「苦しいよな、言った方だって。辛いよな」
「……ぅ…っ………」
「お父さんが、好きなんだよな。そして、お父さんもお前が大好きなんだよ」
左頬の西原くんの手が、私を体ごとくるんでくれている、そんな感覚に包まれた。