ココア
彼の言葉に、胸の奥の感情がゆらりと揺れる。
西原くんにそんなこと言われたのは初めてだ。
懐かしい彼の声を聞いただけで泣きそうだったのに、更に熱い感情が溢れそうになる。
「なんか、倉野のノーテンキな声聞いたら、力抜けたわ」
冗談で笑い飛ばすような感じで軽く言う西原くん。
それでも。
例え冗談だとしても。
スゴく、スゴく嬉しかった。
大袈裟なんかじゃなく、泣きたくなるほどに。
「お前の声聞けて良かったよ。とりあえず、帰ったらまた連絡するわ」
「あ…、あ、き、気をつけて、ね。
ていうか、ほんとにほんとに無事で帰ってきてね」
「ありがとう、倉野。じゃ、またな」
電話を切った後も、しばらくケータイを握りしめたまま離せないでいた。
“ありがとう、倉野”
彼の低く優しい声が、胸の中に響く。
突然の西原くんからの電話。
ずっと前に諦めてしまっていた小さな小さな片想い。
その小さな恋はまた、動き始めるのだろうか‥‥‥。