ココア



帰りは私のアパートの前まで送ってくれた。


バイクに跨る西原くんの後ろで、彼の温度を感じられる幸せを噛みしめていたことは内緒だった。



「今日はありがとう」


「気にすんな、友達なんだから当たり前だろ」


「─ありがと」


その台詞を今度は私に言わせて欲しい。


「少しは楽になった?」


「うん。また、飲みに行こうね」


「おう。じゃあ、またな」



そう言うと、西原くんは片手を上げ、帰っていった。



私はたぶん、イヤ絶対この日を忘れない。


今まで、そしてこれからも、西原くんは誰かのためにバイクを走らせるだろうけど。


でも─。


今日は私のためだけに、バイクを走らせてくれた。


その温かい事実を私は絶対忘れない。





< 123 / 247 >

この作品をシェア

pagetop