ココア
あの日から─。
西原くんの腕の中で泣いた日から、私は急に泣き虫になったような気がする。
今だって、ここが居酒屋じゃなかったら泣き出してしまいたい気分だ。
彼の優しさを感じて…。
彼が触れた頬が熱を持っていくのが分かる。
それを見ていて、恵美がおかしそうに笑った。
「西原って、そんなマメな奴だっけなあ」
「結構メールくれるんだ、絵文字も顔文字もないけど」
きっと、恵美はこれからも優しく笑って見守ってくれるだろう。
私が傷ついたら、一緒に泣いてくれるだろう。
そのうち、恵美にもお父さんのことをきちんと話そう。
きっと私の醜く黒い部分も、受け入れてくれる筈。
私には、こんなに大切な親友がいる。
それはきっと、とてつもない大きな宝物なんだと、そう思う。