ココア



それから5時間後。




私はいつもの駅の待ち合わせ場所で、西原くんを待っていた。


時間は20時を少し過ぎていた。



昼間に来たメールは、恵美から。


その内容に動揺して、思わず西原くんを誘い出してしまった。


急な誘いにも関わらず、二つ返事でオーケーしてくれた西原くん。


きっと今、バイトを終えてここに向かってくれてるんだろう。


昼間に降り出した雨は、夜になって少し勢いを増していた。


夜の雨、それだけで憂鬱な気分なのに─


いつもなら、人混みの中に視線をやって、彼の姿を探してしまう。

すぐにでも、西原くんの姿を目に入れたくて。


でも、今日は─。

力なく俯いたまま、少し濡れている靴の先を見ていた。



「倉野、わりぃ、遅れちゃって」


そんな私の頭上に、大好きな人の声が降ってきた。





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