ココア
彼の顔を見られない。
どうしちゃったんだろう私、ずっと俯いてばかりだ。
そんないつもとは違う私に、彼は最初から気付いていた。
「どした?なんか、あった?」
優しいトーンの彼の声は、今は私を苦しくさせる。
「ううん、なにもないよ」
「そっか」
取り繕うように笑う私を見抜いてるのに、きっと西原くんはそれ以上突っ込まない。
分かってる。
だから、私からちゃんと切り出さなきゃ。
聞きたいこと、聞かなきゃ。
「西原くん、さ。彼女とかって、今いないの?」
遠回しに聞けない、自分の性格が恨めしい。
突然過ぎる、言わないってことは言いたくなかったのかもしれないのに。
「カノジョ、いない」
そう言った彼の顔は、ビックリするくらい無表情だった。