ココア



触れちゃいけないことのように感じられて、思わず言葉を飲み込んだ。


無表情な顔のまま、彼は私ではない誰かを見てる気がする。


「…ぁ、そうなんだ……。ごめんね、突然こんなこと聞いちゃって」


慌てて、無理矢理笑顔を作ったけれど、それはきっとなんとも情けない顔になってたに違いない。


「誰に聞いたの?」


「…え……?」


「倉野がいきなりそんな質問するなんてさ、誰かに聞いたんだろうなって」


さっきの怖いくらいの無表情さは消え、いつもの彼に見える。

見える、けどでも。

彼の中で、今、いろんな感情が渦巻いているように感じてしまった。


「…え、えっと」


「まあ、大体想像はつくけどな。葛城から、だろ?で、葛城は渡部あたりから聞いたんだろうな」


そう言うと、ジョッキに半分くらい残っていたビールを飲み干した。






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