ココア



「焼酎お湯割りで。倉野は?」


「あ、私もそれで」


「じゃぁ、それ2つ」



店員さんが下がって、焼酎お湯割りを持ってくる間、私たちに会話はなかった。


西原くんは深く何かを考えてるようだったし、私はそんな彼を見て、言うべき言葉なんか見つからなかった。



グラスの焼酎を飲むと、あったかくてじんわりと体の中に染み渡る。



「どこまで聞いた?」


「え?」


「葛城からどこまで聞いたの?」


有無を言わさない雰囲気の西原くんは初めてだった。


「……………西原くんにとって大切な彼女がいて…、亡くなった──って」


私の言葉を聞き終えた彼は、とてもとても優しい顔で微笑んだ。


いつもの飄々とした表情でもなく、子供みたいな笑顔でもなく。


悲しくなるくらい、

苦しくなるくらい、

優しい顔で微笑んでいた。





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