ココア
そんな彼を見ただけで、切なくて胸がイッパイになってしまって…。
今何かを言おうとしたら、それはきっと涙になってしまう。
「その話、本当だよ」
「………っ…」
言葉にならない言葉が、今にも目から零れ落ちそうになる。
「陽子と出会ったのは、19歳の時でさ。親父が世話になった看護師さんだった」
─ヨウコ、さん…
西原くんの告白に、私は一心に耳を傾けた。
「末期の癌だった親父にすごく良くしてくれて…。俺たちは自然に惹かれあってた。陽子は3つ年上で、看護師という仕事にやりがいを感じていて元気な人だったんだ」
遠くを見るように、そこに“陽子さん”がいるかのように、優しく微笑みながら話す西原くん。
急にすごく遠い人に思えてしまった。