ココア



チビチビと焼酎の入ったグラスを口にしながら、西原くんは言葉を続けた。


「陽子は、前向きで明るくて元気で。スゴいパワーの持ち主でさ。俺はどんどん好きになって─たぶん生まれて初めて本当に人を好きになったんだ」


「─うん」


自分が発した声が、自分じゃないみたいに掠れて聞こえる。


私が大好きな人の、“その人の大好きな人の話”は、辛いけれど──

それでも、それを受け入れたいって思ってしまう。

うまくは言えないけれど。


「俺たちはすぐに同棲を始めた。そうするのがごく自然の、当たり前の行動だったんだ」


「─うん」


「生まれて初めての感情をたくさんくれた大切な人。最愛の人。俺にとって生涯唯一人の愛する人なんだ」


“生涯、唯一人の愛する人”


この上なく優しい顔で話す西原くん。

そんな西原くんを、ただ見ていることしか出来なかった。





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