ココア



私が泣いたって仕方がないことだけれど、涙は溢れてしまう。


泣きたいのは彼の方…なのに。



「だんだん、俺は陽子の病室に顔を出さなくなっていった。
何も出来ない自分を痛感するだけだったし…。
苦しんでる陽子を支えることさえ、放棄したんだ」



ぎゅう、と心臓を鷲掴みにされたような、

今にも悲鳴を上げそうな、

そんな顔をしている西原くんを、私はどうしてあげたらいいんだろう…。



「…でもさ、陽子は俺を責めなかったんだって。後から陽子のお母さんが教えてくれた」



こんなにも、切ない表情をした人を見たことがない。


たぶん、彼を形作る全てが泣いている。

泣いているんだ。





< 140 / 247 >

この作品をシェア

pagetop