ココア
私が泣いたって仕方がないことだけれど、涙は溢れてしまう。
泣きたいのは彼の方…なのに。
「だんだん、俺は陽子の病室に顔を出さなくなっていった。
何も出来ない自分を痛感するだけだったし…。
苦しんでる陽子を支えることさえ、放棄したんだ」
ぎゅう、と心臓を鷲掴みにされたような、
今にも悲鳴を上げそうな、
そんな顔をしている西原くんを、私はどうしてあげたらいいんだろう…。
「…でもさ、陽子は俺を責めなかったんだって。後から陽子のお母さんが教えてくれた」
こんなにも、切ない表情をした人を見たことがない。
たぶん、彼を形作る全てが泣いている。
泣いているんだ。