ココア



何も出来ないのは私も同じだよ、西原くん。

私もあなたに、何にもしてあげられない…。



「陽子、俺に謝ってたって。ごめんね、て。苦しめてごめんね、て。早く解放してあげたい、て。
それを繰り返して言って…た、て」


私はもう、「うん」と頷くことさえ出来なかった。


「人って、あっけなく死んじゃうんだよ。びっくりするくらいにあっけなく」


そう言った西原くんが、今にも消えてしまいそうに儚くて─


思わずテーブルの上に置かれていた彼の手の上に、自分の手を重ねていた。


西原くんは、それにも気付かないような遠い目をしていた。




「俺が病室に駆けつけた時は、もう目を二度と開けない陽子がいた。
元々華奢な体が一回りも二回りも小さくなってた。
それは陽子が背負ってた苦しみだったんだよ、な」





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