ココア



時折声を詰まらせそうになりながらも、淡々と話を続ける西原くん。


たぶん、そうしなければ話せなくなってしまうんだろう。


泣き顔を見るよりも、遙かに辛い顔を、彼は今している。



「陽子に良く似たお母さんが─、いや、陽子がお母さんに似てるんだよな。そんなお母さんが、俺に“ありがとう”て言ったんだ。“来てくれてありがとう”て」


そうして、顔を歪めて呟くように言った。


「その時、俺は激しく後悔したんだ。
陽子にしてあげられたこと、いっぱいあった筈なのに─何にもしてあげられなかった…。自分を苦しさから守ることを優先させたこと、めちゃくちゃ後悔した」



“そんなことないよ”

なんて、軽々しく言える訳もなかった。




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