ココア



何も言葉に出来ない代わりに、彼の手を握る自分の掌に、思いを込めた。



「だからさ。これからはなるべく後悔しないように生きていきたいって思ったんだ。陽子の姿はもうないけど、目を瞑ればいつでも会える。
そんな陽子に恥ずかしくないように生きたい、てさ、思ったりしてる」


少し、自嘲気味に聞こえるのが気になった。


三年ぶりに会ったあの日。

『人間いつ死ぬか分からない。だから、なるべく後悔のないように生きたい』


そう言った西原くんを思い出す。



ずっと、そんな思いを抱えて生きてたの?

一人で、ずっと…?


あなたを支えている人は、陽子さん以外に─いないの?


もし、そうだとしたら…それは幸せなこと、、、なの?






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