ココア



そう思ったけれど、それを口にすることは躊躇われた。


今の彼は、ギリギリのところでバランスを取っているように見えたから。


もし、崩れてしまったら、二度と戻らない程に壊れてしまいそうに思えたから。



「ネパールもさ、元々陽子が行きたいって行ってたんだ。だから、陽子の思いごと俺が連れていこうと思った。
そこで、新たな一歩を踏み出したかったんだ。後悔…しないように、ね」



私、思うんだ。

後悔しない人間なんていない、よ。


後悔も、
執着も、

そういうこと含めて【生きる】っていうんじゃないかな。


それが、バネになったり、力になったり、時には支えになったり…

うまくは言えないけれど、そう思うんだ。


遠くを見るような目のまま、西原くんには生きて欲しくない。

ね─?





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