ココア
紛れもなく【恋】だ。
私の【想い】だ。
恋の形を、
想いの形を、
私は今、確かに感じているんだ。
それに、気づいてしまった。
彼の【生涯愛する人】の話を聞いた夜に気づいてしまうなんて‥‥‥
─バカ、だなぁ
「気ぃつけて帰れよ」
「うん」
西原くんはいつも、私の電車が出るまでホームで見送ってくれる。
勿論、今日も。
発車のベルが鳴り、ドアがしまっても、私は手を振り続ける。
加速する電車は、西原くんの姿をすぐに置いていってしまう。
片手を挙げた西原くんが、ホームの奥へ消えてもう見えない。
ペタ、と、振っていた右手をドアのガラスに付ける。
今日くらい、私が西原くんを見送りたかったのに─
雨に煙る夜に、西原くんの切なく穏やかな笑顔が滲んでいた。