ココア
何度か、この想いを彼に打ち明けようと思ったこともある。
…でも。
打ち明けることによって、友達でさえいられなくなることが怖かった。
彼との繋がりが切れてしまうことが、どうしても怖くて…。
だから。
私は“友達のまま”でいられる方を選んだ。
高校を卒業して、何人かと付き合ったけれど、ふとした瞬間に西原くんのことを思い出してしまう自分に気がついて。
そんな自分に苦しんで、でもやっぱり嘘はつけなくて。
それからは、恋をすることすら放棄しているような日々だった。
それを恵美は心配しているのだ。
「こう言っちゃなんだけど、西原が電話してきたのって単なる気まぐれかもしれないよ?」
「分かって…る」
恵美と別れた帰りの電車の中。
ケータイを取り出し、受信履歴を開く。
そこに映し出された
【西原くん】
という文字。
登録したばかりの彼の番号。
窓の外を流れていく街の灯りの中、私の顔が映る。
その顔はきっと、高校生の頃の私と同じ表情をしていた。