ココア
コクリと一口コーヒーを飲む。
まるで、佐久間さんそのもののような温かさが、私の中に広がった。
「でもさ、珍しいよね。倉野さんがあんなミス。小島さんなら分かるけど」
「ひど―い!佐久間さんて、麻梨にばっかり優しいんだもんな」
大袈裟な膨れっ面をする、そんな萌が可愛らしい。
萌は佐久間さんが好きなのだ、最近気付いたんだけれど。
最近の私はオカシイ。
自分でも分かってる。
たぶん、あの日から─だ。
西原くんから“陽子さん”のことを聞かされてから。
それから、そのことが気になって仕方ない。
姿は知らないのに、陽子さんの影がぼんやりと西原くんに重なってしまう。
【生涯唯一の愛する人】
そう彼が表現する陽子さんが、私の中にも存在し始めたのだ。