ココア
私の職場は大型スーパーの食品売場。
出会いはないわけじゃない、男性社員やアルバイトの子達も多い。
でも。
西原くんからかかってきた一本の電話が、ますます恋愛放棄に拍車をかけてしまった気がする。
「倉野さん、お疲れ!」
社員食堂で一人昼食を食べてると、佐久間さんが私の前に座った。
佐久間さんは、今の職場で私が一番親しい男の先輩だった。
彼の持つ人を和ませる空気が、人見知りな私でも懐いてしまった理由かもしれない。
「佐久間さん、お疲れ様です。今日は忙しいですね」
「ん~、忙しいね。今朝、売り出しのチラシ入ったしなぁ」
「そうですね、じゃ、私先に戻りますね」
立ちかけた私に佐久間さんが慌てたように声をかける。
「あ、倉野さん。久しぶりに今日、飲みに行かない?」
言われた瞬間、西原くんの顔が浮かんだ。
23歳のままの西原くんの顔が。