ココア
スウェットの上にニットのカーディガンを羽織っただけで、すぐに家を飛び出した。
傘を差す手の反対側には、もう一本の傘。
西原くんは家に来ようとして、迷ってしまって、今すぐ近くの公園にいるらしい。
素足にスニーカーで出てきてしまっているから、水たまりからの冷たい水が裸足の足を濡らす。
でも、そんなことには構ってられない。
何かが私を急かす。
早く、早く彼を見つけなさい、と。
5分ほど走ったところにある公園、西原くんはここにいるはず。
ところどころに灯る街灯は、雨で暗さを増した公園内を満足には照らしてくれない。
ぐるっと見渡したけれど、彼の姿は見当たらない。
パチャパチャと水を跳ね上げて、公園内を探し回る。
「西原くん!どこ?」
何度か呼びかけたけれど、声は戻ってこない。