ココア
「西原くん!!」
ザーーーーーーーーッ
雨音にかき消されてしまう声。
雨は深夜になって勢いを増している。
雨と寒さで凍えた手でケータイを取り出し、番号を呼び出した。
私、何をそんなに焦っているんだろう─
「も、もしもし?」
「お、もう来てくれたんだ」
「どこ?見当たらないよ」
「…ぁ、わり。濡れちゃうから雨宿…りしてる」
子供たちが何人も並んで横一列で滑れるような、そんな大きな滑り台の下に西原くんはいた。
「西原くん!」
「おー、悪いなわざわざ。駅からお前ん家まで歩いていこうと思ったんだけどさ。昼と夜じゃ感じ違うから迷っちゃったよ」
崩れ落ちたように座り込んでいる西原くんが、そこにはいた。