ココア
胸が、苦しい。
心も、体も、全部がキツく掴まれたみたい。
息をするのさえ、苦しいほど。
腕の中、彼から雨の匂いがする。
でも、私の体ももうだいぶ冷えきっているから、きっと私たち二人を雨の匂いが包んでいるのかもしれない。
空中で行き場をなくした私の両手が、西原くんの背中に触れる。
彼の体温を感じた瞬間、私の中の何かが割れた。
「ぅぅぅ…っ。うぅ…っ、ぅぁぁ、ん」
彼の肩に額を押しつけて、ひたすら泣いた。
「ごめん、倉野。ごめん…、ごめん」
「…ぅぅ……っ」
西原くんの両腕が、私を強く包む。
私たちは、この時
きっと心が繋がっていた。
恋なのか、
愛なのか、
友情なのか、
そういう枠には嵌らないような気がする。
だけど、とても大切で暖かい“ナニカ”
それは、一瞬の心の繋がりでしか、ないのかもしれないけれど─。