ココア
部屋に帰ると、バスタオルを西原くんに渡し、ストーブを点けた。
ついでに、濡れてしまったスウェットも着替えた。
「あんまりキレイな部屋じゃないから恥ずかしいけど」
こんな時に言うセリフじゃないのに、私なに言ってんだろう。
そして、温かなココアを二人分作って彼に手渡した。
西原くんは、キッチンの壁に背中を預け、足を投げ出して座っていた。
前髪からは、まだポタポタと雫が落ちている。
「西原くん、せめて頭だけでも拭いて?あと、私のだけど、着替えも…」
そう言っても、彼は動かない。
そんな彼から、少しお酒の匂いがするのに気がついた。
「飲んでたの?」
「…うん」
「一人で?」
「うん」
「誰か誘えば良かったのに」
「いないよ」
「え?」
「誰も、いない」
その時西原くんは、冷たいような、諦めにも似た顔をしていた。