ココア
佐久間さんとは、今までにも何度も飲みに行っている。
職場の仲間がいる時もあるし、二人で飲みに行くこともある。
佐久間さんは、どんな話でも優しく聞いてくれる、私がグチをこぼせる唯一の先輩だ。
3つ年上で、優しくて面白い、とても大切な友人の一人でもある。
「あ、今日友達と約束があって…」
「そっか、じゃ、また今度ね」
残念そうに、でも、いつもの優しい笑顔でそう言ってくれた佐久間さん。
そんな佐久間さんの前から小走りで食堂を出る。
約束がある、なんて嘘だった。
嘘をついた、という後ろめたい行為が、私の足を急がせた。
自分のロッカーに戻り、ポーチを取り出して鏡に向かう。
鏡に映った自分に聞きたい。
なんで、あんな嘘ついたの?……って。