ココア



目を見て話すのはさすがに出来ないから、視線はずっとココアに向けられていた。


「あれからね、泣くことも弱いとこ見せることも、恥ずかしいことじゃないんだ、て思うようになったの」

「…弱い、とこか」

「自分の気持ち、大事にしたくなったの」

「うん」

「西原くんの前では、泣いてばっかりになっちゃってるけど」

「お前が泣く度に、羨ましいって思ったよ。
俺も泣けたらな、てさ。
でも、実際はな~。無理だよ」


諦めたように笑う西原くんが悲しかった。

だから、ここで私が諦めちゃいけない。


恥ずかしいのを堪えて、彼の目を見る。

俯いた長い睫を見つめる。



「無理じゃない」

「え、、、?」

驚いたように見上げる西原くんの目が、私の目を見る。


苦しいほどの心臓の鼓動を感じながら、私もちゃんと彼の目を見た。





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