ココア
いつも人の目を見て話す西原くん。
そんな彼が、自信なさげに目を逸らす。
「無理だよ、俺には」
その声には迷いが感じられる気がした。
「無理じゃないよ」
「…無理だって」
「とりあえず、ココア飲んで?冷めちゃうよ。
泣いた後は糖分補給しなきゃいけないんだよ」
「俺、泣いてないから」
ふ、と彼の顔に笑みがこぼれる。
「泣いてたよ」
「泣いてないって」
「公園の滑り台の下で泣いてたよ。私には、、、そう見えた」
「…お前、目、…悪いんだな」
マグカップを握っている彼の手に、ホロリと雫が落ちる。
雨の雫じゃ、ない。
「私、頼りないけど。全然頼りないけど。
でも、やっぱり…力になり、、、たいの」
「お前が先に泣いてどうすんだよ」
そう言って顔を上げた彼の頬には、涙が零れていた。