ココア
西原くんは、後悔にがんじがらめになっていたんだ。
「…陽子さんは…。
陽子さんは西原くんのプロポーズを【自分自身への言い訳】だなんて思ってないよ、きっと」
涙を拭うこともせずに、ずっと俯いたままの西原くん。
安易な慰めの言葉はきっと、彼の耳には届かない。
分かってるけど、言わずに入られなかった。
「きっとスゴく嬉しかったんだと思う。
頷かなかったのは、たぶん、西原くんの為だったんじゃないかな」
「…俺の?」
「自分がいなくなった時に、西原くんの苦しみが少しでも少ないように。
私なら、きっとそう思うから」
「それからだって、なんにもしてやれなかったよ、俺。
病室に行くことすら、避けるようになったんだから」
「──。」
ヒリヒリとした言葉だけが、この狭い私の部屋を埋めていった。