ココア



「ずっ…と俺のこと、…待ってた……のかもしれないのに。
あの、病室の…狭いベッドの…上で…。
俺の…こと、ずっと………………っ」



大粒の涙が、彼の頬を絶え間なく濡らす。



「…俺、サイテー……だよ。 陽子は、一人で闘って…たのに」



脳が考えるより先に、体が動いていた。


私の、この頼りない両腕で西原くんを抱き締めていた。



逞しくなったと思っていた彼の肩は、私の腕の中で嗚咽と共に震えている。



何か言葉を言えたら良かったのだろうけど、私には、ただ抱き締めることだけで精一杯だった。


西原くんは、私の背中に腕を回し、私の肩に顔を寄せた。

子供が母親に甘えるように。


細かく震える彼の肩を必死に抱き締める。


彼も私の背中に回した手に力を込める。


何も余計な感情が入り込めない、切ない抱擁だった。





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